渋沢教会
更新日:2014.7.19

7月6日 御言葉の説教「暴挙の代償」

大井 啓太郎牧師
創世記34:1〜31
マタイ26:52

 

 ヤコブ一族は無事、約束の地カナンに戻りました。しかしそこに住み始めて間もなく、その事件は起きてしまったのです。 ヤコブとレアに生まれたディナが土地の娘の所に会いに出かけた時、土地の支配者ヒビ人ハモルの息子シケムに辱しめられてしまったのです。 支配者の息子ですから、自分の思いのまま手に入れたいものは手に入れるといった傍若無人に生きてきたのでしょう。 しかし、シケムは何と、乱暴をしたディナに心奪われてしまい、彼女を妻にしようと、父親に話し、 そしてヤコブに結婚を願い出たのです。父ヤコブの気持ちは複雑でした。もちろん娘が辱しめられ、 平気でいられる父親などどこにもいません。しかし、カナンの地に戻り、 やっと放浪の旅から安定した生活を築きつつあったヤコブとしては、隣人とのトラブルは避けたかったというのも本音でした。 自らの生活を支えるために土地の水、食料など、多くを依存していたからです。 きっかけは悲しむべきことでしたが、相手は誠意をもって対応してくれている。 互いが親戚となればこれ以上の安心はない。一族の将来のためにどのような決断をすべきなのか…彼は迷ったのです。

 しかし、息子たちは違いました。特に実の兄である、シメオンとレビは、怒りに燃えていました。 彼らは報復する方法を考え、実行に移しました。抵抗できないシケムの町の男たちをことごとく殺し、略奪し、 女子供を捕虜にしてしまったのです。それは報復をはるかに超えた暴挙・暴虐でした。 これを知ったヤコブはしかし、息子たちに「困ったことをしてくれたものだ」 と事がらの善悪を問うことなく自分たちの身の安全について語るだけでした。シケムの父が息子に甘かったように、 ヤコブもその息子たちに甘かったのです。報復すれば、相手の家族に同じ憎しみの心を生んでしまう。 報復の連鎖が、民族のDNAとなってしまうのです。今世界各地で起きている紛争の多くは、 このような民族同士の報復の連鎖によるものです。「剣を取るものは皆、剣で滅びる」。